LAPIS・MOTION IN THE SILENCE

鉱石に潜む 静寂と躍動を描いた連作「LAPIS・MOTION IN THE SILENCE」。
瞬間の世界ではとどまっているのかも知れない鉱石も、宇宙的な時間世界では流動しているに違いない。物言わぬ鉱石の静寂、そしてその中から湧き出て来る静かな躍動感というものを絵にしたい、そういう思いで描いた連作です。
2013年から制作し続けてきたこの連作が、この度、ようやく画集となってHedgehog Booksより刊行されました。言葉はなく、暗闇に光る鉱石をモチーフとした絵がページをめくるごとに繰り返されていきます。展覧会で作品をひとつひとつ鑑賞していくように、そしてその展覧会を1冊の本という形で手元に置けるように、そういうイメージで作った本です。
この本は、企画から構成、編集、デザイン、印刷にいたるまで、すべての工程に自分でも関わって作った特別な本です。印刷で特にこだわったのは、絵の色味はもちろん、とにかく気持ちの良い「黒」を探す作業でした。ひとくちに「黒」と言っても、その色の深さや、赤っぽい黒、青っぽい黒など、様々な「黒」というものがあります。何度も試行錯誤を繰り返し、最終的には印刷屋さんもこれが限界という所まで付き合ってくれたおかげで、理想の「黒」にたどり着く事ができました。

紙質についても、この連作のベースとなる深い「黒」と、鉱石の放つ様々な「光」を表現するために、いつも使用してきたマットな手触りの紙ではなく、より表現力の高い艶やかな紙を今回は採用しました。また、インクの粒子量など、細部にいたるまで印刷屋さんと調整しながら作った甲斐あって、輝く鉱石が本の中に実在しているかのような存在感が表現ができて、とても満足のいく仕上がりになりました。




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ハードカバーは一般書籍に使われるものよりも分厚いものを使用したので、どっしりとした存在感があります。さらにその上にヴェルベットという加工を施したことで、しっとりとした革のような手触りになっていて、この連作を表現するのにふさわしい高級感のある仕上がりになっていると思います。ぜひ実際に手にとって感触を確かめてもらいたいです。

この本を作る上で、学んだ事や、考えたり感じたりした事がたくさんありました。こうやって完成した本を見て今感じているのは、これからは絵を描く時のように、ひとつの作品を作る感覚で「本」というものを作っていけたら、という思いです。この本をそういう感覚で作る事が出来た今、なんだかこの先の自分にとってはそれが一番良い事なんじゃないかと感じています。絵を描く上でもたくさんの挑戦をした作品たちでしたが、こうやって本という形になった事で、次の新しい挑戦の方向を照らしてくれているような気がします。

「LAPIS・MOTION IN THE SILENCE」
Hardcover / Pages : 60
Format : 300×300×15mm
Publisher : Hedgehog Books, 2015

※4月18日よりHedgehog Books and Galleryで開催中の「LAPIS・MOTION IN THE SILENCE 出版記念展」会場で発売中です。オンラインショップでは会期終了後、準備が整い次第取扱いが開始される予定です。